不動産売却の流れ
はじめて住まいを売るとき、何から準備したら良いのかわからないものです。
「不動産を売りたいがどうしたらいいのかわからない」
「売却金額は一体いくらになるのか」
「そもそも売れるのか」
マイホームを売ろうと考えている人は、様々な不安や疑問を抱えていることでしょう。
住まいを買うときは、不動産会社など多くのサポートがあったはずですが、売るときは自らが行動を起こさなければなりません。
ここでは不動産売却を失敗しないように、「住まいを売るための流れ」をご説明します。
売却計画と情報収集
住まいを売却するとき、まずは全体の流れを把握することが大切です。売却による税金がどうなるのか、また手取り額がいくらになるのかなど、資金面の確認もしておくことが重要です。
なぜ不動産を売りたいのか?また、なぜ売らなければならないのか?マイホームを売却しようとしている理由は、買い換えや資産整理のため、相続発生のためなど、売りたい理由は様々です。
売却の目的や理由によって、売却の条件が変わってくるはずです。まずは、売却の目的を確認して、しっかりと整理することが、安全な不動産取引をするための第一歩です。
売却計画を立てる
売却の目的を達成するための問題点を整理しましょう。
住まいの買い換えの場合、新しく購入する物件の資金計画で売却資金から充当する予定金額や借入の残債、売却や購入にかかる諸費用等の綿密な計算はできているか、また売却価格を最低いくらまでなら値下げ交渉に応じられるかなどの計画が必要です。
売買代金から売却にかかる諸費用を差し引いた残りが実際の手取り金額になるため、住み換えを行うには、この手取り金額が自己資金(購入資金に充当)となります。
新たに購入する住まいの資金計画を立てる上で、必要となるため把握しておきましょう
住宅ローンを返済中であれば、住宅ローンの一括返済が必要となるため、売却代金で住宅ローンの完済が可能か確認をしておく必要があります。
相続をした場合、遺産分割協議は完了しているか、不動産の売却について、同意できていない相続人が1人でもいるときは、同意が得られるまで計画を進めることができないので注意しましょう。
売却計画に全員の同意がある場合、売却代金、分配方法などについて同意を得られることが必要です。
売買価格の相場を調べる
まずインターネットなどで自宅がいくらぐらいで売れそうか、どの不動産会社に売却を依頼するかを調べておきましょう。
不動産売却一括査定サイトを利用することも、市場価値を知るひとつの方法ですが、査定する不動産会社によっては、非常に高めの金額を提示してくることが多く見受けられますので、地域密着で長年営業している不動産会社の査定を受けることもお薦めします。
日々、変化する不動産市況の査定結果でしかないため、実際の売り出し時期の市場価値と、査定時の結果が必ずしも一致するとは限らないことを念頭においてください。
売り出し中の物件の売出価格が掲載された不動産ポータルサイトなどを利用することもひとつの方法ですが、特に重視するのは、不動産の成約価格の情報です。
不動産ポータルサイトなど売り出し中の提示価格ではなく、実際に成約した価格を見ることで、より正確に相場を把握することができます。
不動産売買の注意点
土地の売買には、公簿売買と実測売買があります。
公簿売買とは実際の土地面積を売買代金と関連させず、登記上の土地面積を売買対象として売買を行います。
実測売買は、契約締結までに実測を行い、その面積によって取引を行う方法と、契約後から決済までの間に実測して売買代金を確定して清算する方法があります。
また隣地所有者と境界立会いを行い、確認したうえで測量をし、測量図を作成して買主に交付する必要があります。
建物がある場合は、経過年数により品質や性能が低下しています。この経年劣化によるものとは別に、シロアリ被害、雨漏り、木部の腐食、不等沈下による建物の傾きなどの欠陥があった場合、売主が買主に対し、建物の不具合を告げておらず、引き渡し後にこれらの欠陥が見つかった場合、売主が契約不適合責任を負うことになり、買主から修理や減額等を請求されることがあります。
住まいの売却で気を付けなければならないトラブルとして、契約不適合による売主の担保責任を知っておく必要があります。
これは、売却した土地や建物の種類、品質または数量に関して、契約内容に適合しないときに売主が買主に対して負う責任のことです。
不動産の売却において、売主としての法律上の責任を理解しておきましょう。
不動産会社に査定を依頼
不動産には定価がありませんので、住まいを売ろうと思ったときには、不動産会社に売却価格の査定を依頼しなければなりません。
まだ売却依頼を決める前の相談ですが、差支えのない範囲でできる限りの情報を提供してください。また査定には、地域密着で営業する会社を加えることもお薦めします。
不動産会社には守秘義務がありますので、依頼者から提供された情報を承諾なく外部に漏らすことはありません。
不動産査定とは、売却の予想価格を算出することであり、必ずしもその金額で売却できることを保証するものでもありません。
これくらいの価格で購入してくれるお客さんを見つけることができるのではないか。という予想の価格なのです。
「かなり築年数の古い実家が意外に高く査定されたり」
「大事に使っていた自宅の評価が驚くほど低くかったり」
といったなど想定外の評価をされる場合もあります。
査定を依頼された不動産会社では、机上で概算価格を算出する簡易査定も行いますが、売却を進める上では、実際の「売却見込み価格」を算出する訪問査定が必要です。
訪問査定は簡易査定と比べて、より精度の高い査定を受けることができ、約一週間程度で査定結果が出ることが多いです。
売却に必要な書類
築年数の古い住まいを売却する方に多いのが、書類や住宅資料の紛失です。売買契約書や登記済証などはお手元にありますか?
家屋や土地に抵当権が付いているかなどは把握していますか?「自分の名義だと思っていたのに亡くなった親御さんの名義のままだった」などということがないように書類は今一度確認しておきましょう!
登記済証または登記識別情報
登記済証は、法務局から登記名義人に公布される書類です。権利書といったほうが分かり易いかもしれません。登記名義人がその物件の所有者であることを証明する重要な書類です。
また売却する物件が平成17年以降に取得したものである場合は、登記済証の代わりに登記識別情報を発行される場合もあります。
登記識別情報とは、登記済証に代えて発行されるアラビア数字その他の符号の組合せからなる12桁の符号で、不動産及び登記名義人となった申請人ごとに定められているものです。
購入時の売買契約書や重要事項説明書など
新築や中古で購入したマンション、一戸建て、また土地では、売買契約書、重要事項説明書、また売却後も継承される事項が記載された各種覚書、マンションの場合は購入時のパンフレットなどあった方が便利です。
重要事項説明書があると、ご自身が購入時に何を通知されたのかわかるため、売却時の瑕疵を防ぐこともできます。
また不動産会社が査定する際にも、査定精度を上げるために役立ちます。
地籍測量図や境界確認書など
地積測量図は、道路や隣接する土地との境界が定められた上で測量され、その結果が図面として記載されて、土地登記簿に登録されているものです。
境界確認書は筆界確認書ともいいますが、隣接する土地所有者と立会って署名・捺印した書類を双方一通づつ所有しているのが一般的です。
特に敷地の境界が不明瞭だったり、隣接する土地とトラブルになる可能性がある場合はあったほうが良いでしょう。ない場合は、土地家屋調査士に依頼する必要があります。
建築確認済証および検査済証
建築確認済証は、建物を建てるときに、建築会社が市区町村などに建築の確認を申請して、許可してもらった証明書です。
検査済証は、工事完了後に確認申請通りに建築されたことを確認した証明書です。
また建築確認済証、検査済証を紛失してしまった場合、再発行することはできませんが、市区町村役所の建築指導課に保管されている台帳記載事項証明書で代用が可能です。
建築設計図書や仕様書など
一戸建てを新築で購入した場合は、購入時にもらっている書類です。建築設計図書は、不動産会社が販売用の図面を作成するのに必要でもあり、あったほうが売却で有利になります。
その他建物に関しての書類も色々あった方が、購入希望者に良いイメージを与えられるでしょう。
住宅性能評価書など(取得されている場合)
住宅性能評価書は、国土交通大臣に登録した第三者評価機関が全国共通ルールのもと、住宅の性能を公平な立場で評価し、その結果を表示した書面です。
戸建てもマンションも同様にグレードの高い家にしか発行されませんので、あれば売却に有利です。
固定資産税納税通知書または評価証明書など
固定資産税の納税額の確認のために必要となる書類です。
毎年1月1日時点で、不動産の所有者に課税される固定資産税の詳細が記載された書類です。
固定資産税の納税義務は売主にありますが、取得時期に応じて負担額が調整され、売主に一部払い戻されるのが一般的です。
住宅ローン残高証明書または住宅ローン返済予定表
住宅ローンを支払い中の場合は、契約をするうえで実質的に必須と同じ扱いをうけるので準備が必要です。買い主や不動産会社に状況を伝えるためだけでなく、自身の種有する不動産を売却後に住宅ローンを完済できるかを確認するためにも必要です。
ローン残高証明書の代わりにローン返済予定表もローンの残高が記載されているので、残高証明書の代用になります。
もし紛失してしまった場合は、借入を行った金融機関に依頼することで、再発行が可能です。
管理規約または使用細則など(マンションの場合)
マンションの場合は、管理規約、使用細則、維持管理等の記録(管理費・修繕積立金・管理組合費・町内会費等)が必要です。
管理費や修繕積立金とその改定予定、駐車場や庭の使用権、専有部分の用途制限、ペット飼育制限、管理費や修繕積立金の収支や滞納額、大規模修繕の予定と長期修繕計画表などがマンション売却に大きく影響しますので、なるべく多くを準備しておいた方が良いでしょう。
不動産の売却において重要な査定価格
不動産の価格査定によって、不動産会社から提示される査定価格とは、中古市場の取引相場や動向を考慮したうえで、売主が売出価格を決めるための目安となる価格であり、その価格で不動産市場に出した場合には、おおむね3ヶ月以内に成約するであろう価格とされています。
不動産には多くの価格が存在します。取引の流れの中での価格には、売主の希望売却価格、不動産会社の査定価格、売出価格、買主の購入希望価格、成約価格があります。
最終的な住まいの価格は、契約交渉の中で決まる成約価格ということになります。
不動産会社の査定価格は、業者により多少異なりますが、周囲の相場を考慮して早い段階で売却が可能と思われる価格が提示されます。
売却の依頼を受けたいがために、他社より高い価格を提示する不動産会社もありますが、高いからと安易な判断をしないことが必要です。
売出価格は、売却の目的や事情を考慮しながら不動産会社と相談して決めましょう。
売却を依頼する不動産会社選び
不動産会社から納得のいく査定価格の提示を受けたら、査定価格を目安として売出価格の検討が必要です。
複数の不動産会社へ査定を依頼した場合には、その中から売却を依頼する不動産会社を選ぶことになります。
不動産会社は、売主の利益を最大限に守りながら、取引の相手方と交渉をするパートナーとなる存在ですから、単に査定価格の良し悪しで選ぶのではなく、慎重に判断しましょう。
また不動産会社を選ぶときに迷う方もいるかと思いますが、大切なのは会社の規模ではなく、担当する営業マンの法令遵守への姿勢や販売活動の手法、熱意などから、あなたのパートナーとして信頼のおける担当者なのかどうかなのです。
売却を依頼する不動産会社が決まったら、相談したうえで売出価格を決定し、媒介契約を結ぶことになります。
不動産会社と媒介契約を結ぶ
不動産を仲介で売却する場合、売却活動を始める前に不動産会社との間で、売却方針などを定めた媒介契約を結ぶ必要があります。
媒介とは、売主と買主の間を取り持って、不動産取引を成立させることです。不動産会社へ正式に媒介を依頼するために、締結するのが媒介契約です。
媒介契約を締結する前に、どの種類の媒介契約を結ぶか決めなければなりません。
媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類あり、売却する条件にあった媒介契約を選びましょう。
媒介契約を結ぶ際に、売却する不動産の状況を報告書「物件状況確認書(告知書)」としてまとめて記載しておきましょう。自身が把握している建物の雨漏りや周辺の騒音など、土地や建物の状況を告知するための書類です。
また建物内にある設備等の故障や、不動産の付帯設備として何を置いていくかを「付帯設備表」と呼ばれる書類も記載しておきましょう。これらの書式は不動産会社が所持していますので確認してください。
媒介契約の種類と特徴
媒介契約では、その種類によって、不動産会社の行うべき業務内容が異なります。
そのため契約を結ぶ前に、媒介業務の内容について説明を受けるとともに、違いを理解したうえで、売却希望に合ったタイプの媒介契約を選ぶようにしましょう。
一般媒介契約の特徴
依頼者は、ひとつの不動産会社に限定することなく、複数の不動産会社へ重ねて依頼することができます。
一般媒介契約には、明示型と非明示型があり、明示型では、依頼者には不動産会社に対して、他にどの会社に依頼しているのかを通知する義務があります。
また非明示型であれば、他の不動産会社に重ねて依頼しているのか否か、あるいは依頼している場合、どの不動産会社に依頼しているのかについて、通知をする必要がありません。
一般媒介契約では、売主(依頼主)が自ら見つけた購入希望者と直接売買契約を結ぶことができます。
不動産会社のレインズ(不動産流通標準情報システム)への登録義務はありません。また依頼主への売却活動の報告義務もないのが、一般媒介契約の特徴です。
ただし、あくまで義務がないだけで、契約の時に依頼主が希望すれば、不動産会社にレインズへの物件登録や売却活動の報告をお願いすることはできます。
一般媒介の契約期間は、法令上の制限はありませんが、3ヶ月を目安としている不動産会社がほとんどです。
一般媒介契約の最大のメリットは、購入希望者を比較して、好条件の購入希望者を選び、より良い条件で売却できることです。
一方、デメリットとして、積極的な売却活動をしてもらえない可能性があります。
不動産会社が競うことで好条件で売却できる可能性があるという反面、最終的に買主を見つけて、売買を成立させた不動産会社だけが、仲介手数料の報酬を受け取ることができます。
売買を成立させられなかった不動産会社は、どんなに頑張って販売活動をしても、報酬を得られないばかりか広告費がマイナスとなり、努力が無駄になってしまうからです。
また依頼主への売却活動の報告義務がないので、報告をもらわなければ、それぞれの不動産会社の販売状況が見えづらく、買い手の反応を把握できません。
その為、価格の見直しをするなどの販売戦略も立てにくくなるでしょう。
販売状況を確認するためには、それぞれの不動産会社に自ら確認を取らなければなりません。忙しい人にとっては、それぞれに確認をしなければならない作業が、手間となってしまうので注意が必要です。
専任媒介契約の特徴
専任媒介契約は、依頼できるのは1社だけで、依頼者が複数の不動産会社に依頼することはできません。
一般媒介契約と同様に、売主(依頼主)が自ら購入希望者を見つけたときは、直接契約をすることもできます。
不動産会社が専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、所在、規模、形質、価額、法令の制限などの物件に関する情報を、7営業日以内に、レインズ(不動産流通標準情報システム)への登録義務が課されます。
また、売却活動の報告義務についても、法令に定めがあり、専任媒介契約の場合には2週間に1回以上の報告義務があります。
専任媒介契約の契約期間は、3ヶ月を超えることができません。
不動産会社1社のみと契約を結ぶ専任媒介は、他の不動産会社で売買契約が決まることがないため、不動産会社が、販売活動を熱心にする可能性が高いです。そのため買主が決まりやすく、スムーズに売却ができるのが専任媒介契約の特徴です。
その上、不動産会社とのやり取りも1社のみのため、窓口が1つで済みますので、複数の不動産会社と媒介契約書を交わしたり、何度も打ち合わせしたりする手間が少なく、対応が楽になるでしょう。
一方でデメリットとしては、不動産会社の営業担当者による売却活動次第で、希望通りの売却ができない可能性があったり、「囲い込み」をされて売却に時間がかかってしまう可能性があるので、不動産会社を慎重に選ぶ必要があります。
専属専任媒介契約の特徴
専属専任媒介契約は、専任媒介契約と同様に、依頼できるのは1社だけで、依頼者が複数の不動産会社に依頼することはできません。
最大の特徴として、専属専任媒介契約の場合は、依頼主が自ら購入希望者を見つけたとき、または親戚や友人などが不動産を買ってくれることになった場合でも、依頼した不動産会社を介して契約しなければならず、直接契約することができません。
不動産会社が行う売却活動の報告や、レインズ(不動産流通標準情報システム)へ登録する期日が3つの媒介契約の中でも最も短く、売主への1週間に1回以上の報告と、媒介契約から5日以内にレインズへの登録の義務があります。
購入希望者を探しにくい、また売れにくい物件の場合は、いち早い不動産情報の公開をし、十分な広告宣伝費をかけ、営業担当者が熱心に販売活動してくれることで、物件を早く確実に売却したい時には、専属専任媒介契約が適しているといえるでしょう。
ですが、不動産会社の力量に左右されやすい点にも注意して、依頼する不動産会社の見極めが必要です。
媒介契約には、それぞれ一長一短がある
一般媒介契約と専任媒介契約では、売主(依頼主)が自ら購入希望者を見つけたときは、直接売買契約をすることができますが、個人間での直接取引は、後々トラブルを引き起こすリスクがあります。知識がない場合は控えたほうがよいでしょう。
専任媒介契約と専属専任媒介契約では、1社にすべてを委ねることになりますので、選んだ不動産会社や営業担当者の販売力が低ければ、売却成立が遠のいてしまうでしょう。
専属専任媒介と専任媒介の契約期間は3ヶ月以内となっています。契約期間内に売却で
きなかった場合は、互いの合意により更新することができます。
その場合は、更新契約書を作成しますが、改めて媒介契約書を交わすこともあります。媒介契約を自動更新とすることはできません。また契約更新は、売主の希望が無ければ契約の更新はありません。
媒介契約を途中で解除したい場合、解除することはできますが、それまでの販売活動に要した広告費用等の費用負担が生じる場合があります。それぞれの媒介契約書の契約約款をよく読んで理解しておくことが必要です。
以上3つの媒介契約には、それぞれ一長一短があります。
住まいの買替えで転居先が決まっている場合、相続対策などで急いで売却したい場合、また売却は急いでいないので、とにかく好条件で売りたい場合、中古戸建てなどの売れにくい物件を確実に売却したい場合など、どの媒介契約を選ぶかは、売りたい物件に応じて検討するのがポイントです。
売却活動をスムーズに進めるためには、媒介契約それぞれの違いを理解した上で、適切な選択をしましょう。
購⼊希望者を探す販促活動
不動産会社と媒介契約を結ぶと販売活動が始まります。購入希望者探索のために、不動
産会社は、売主の状況や物件の状況に応じて販売方法を選択します。ここからは、基本的に売主ではなく、不動産会社主導で販売活動が進みます。
広告を見て興味を持った人から、不動産会社が問い合わせを受け、実際に物件を見たいという内覧希望があれば、物件の案内や説明を行います。
売主が住みながら売却を行っている場合、実際に案内するのは、プロである不動産会社が行いますので、売主は立ち会うだけです。
内覧の際には、事前に部屋の掃除や整理整頓をしておきましょう。内覧は、購入希望者が購入するかどうかを決定する大切なポイントになりますので、購入希望者に好印象をもってもらえるようにすることも重要です。
不動産会社が行う販売方法とは
- 不動産流通機構のレインズに物件情報を公開
- 購入希望管理顧客へのアプローチ
- 販売協力会社への情報提供
- 不動産情報サイトへの物件掲載
- 自社ホームページへの物件掲載
- オープンルーム等のイベントを実施
- 物件周辺へのポスティング実施
不動産を仲介での売却の場合、購入希望者を探すため不動産会社は、自社のネットワークや広告などを利用して物件の販売活動を行います。販売活動の状況等については、媒介契約に基づいて、定期的に報告を受けることになります。
購入希望者の気持ちになって準備をする
販売を開始すると、いよいよ購入希望者が物件を見に来ます。
購入希望者が見学を希望するときは、担当者から事前に連絡がありますので、日時の調整をしましょう。
また見学は週末の日中が多いので、大切な購入希望者を逃さないためにも、なるべく週末は待機するのが望ましいでしょう。
日時が確定したら、見学に来る購入希望者に、よい印象を持ってもらうように準備をしましょう。気合をいれて内覧の準備をしてください。
購入希望者は、不動産のプロではありませんので、不動産会社による査定と違って、見た目の印象に左右されてしまいます。
見学する物件が、購入の検討に値するかどうかは、第一印象で判断されるのが一般的です。
もしも、あなたが物件を見学に行ったとき、壁や床が汚れているような、手入れがされていないような物件には住みたいとは思わないでしょう。
台所、洗面所、浴室、トイレの水回りは特に気にする人が多いので丁寧に掃除しておきます。また玄関、ベランダや庭も忘れずに掃除しましょう。購入意欲が高ければ高いほど細かな部分の見学を希望しますから、クローゼットや押入の中まで見せる必要があることも覚えておきましょう。
築年数が古くても、しっかり手入れしておけば、買い手が気に入る可能性は十分にあるのです。
あまりにも汚れなどがひどい場合は、ハウスクリーニングを利用するもの一つの方法です。
販売状況が良くない場合どうするか
販売活動を始めて、1 ヶ月、2 ヶ月経過しても反響が少ない、他の不動産会社からの問い合わせもないなど、販売状況がよくない場合には、早めに原因を分析して、対策を講じる必要があります。
もしかすると、売り出す時期が悪いのかもしれません。外観が悪いのも売れない原因だったり、立地が悪いなど、市場流通性が低い地域内にあることが原因であれば、長期戦を覚悟する必要もあります。
本来であれば、もっと反響が多くてもよい地域内の物件であるときには、はっきりした原因が何かあるはずです。
物件特性の問題なのか、販売価格が高すぎるのか、またその両方なのか、不動産会社の担当者と一緒に原因を分析し、売出価格の調整を検討してみたり、新しい販売方法を試してみたりするなど対策をとりましょう。
条件交渉と不動産売買契約
購入希望者は、購入したい物件が見つかったときに、媒介業者を通じて、購入の申込書を提出してきます。この申込みは口頭によるものではなく、不動産購入申込書として書面で行われます。
購入希望者から、購入申込書を正式受領した段階で、価格条件、引渡し条件などについての交渉が開始されます。実際に交渉するのは不動産会社がおこないます。
売主と買主の希望条件が異なる事項については、媒介業者が公平な観点から取引の専門家としてアドバイスをしながら調整します。
詳細な条件交渉で、売主と買主の双方が合意に至ったときは、不動産売買契約を締結することになるため、売主は契約に向けた準備に入ります。
契約に向けて準備するもの
- 本人確認書類(運転免許証やパスポート等)
- 土地や建物の登記済証(権利書)または登記識別情報通知書
- 印鑑(認印あるいは実印)
- 手付金の領収書
- 媒介報酬の一部
- 収入印紙
土地や建物の登記済証(権利証)または登記識別情報通知書は提示するだけです。媒介業者が事前に確認をして、当日は、買主に提示しない場合もありますので、媒介業者の指示に従ってください。
手付金の領収書は、媒介業者が用意することが多いです。
媒介報酬は、不動産会社への報酬として、売買契約が成立した時点で半金、残額は決済・引き渡しのときに支払うのが一般的です。
- 物件状況報告書・付帯設備表
- 固定資産税・都市計画税の納付書
- 建築確認通知書、検査済証、建築協定書、覚書など
- 管理規約、使用細則等(マンションの場合)
上記の項目は、あくまでも一般例です。契約時には、その他の書類等が必要になることがあります。
売主と買主が不動産売買契約の締結
不動産売買契約の日程の設定や、売買契約書の作成などは不動産会社が行います。
契約書は売主と買主、双方の権利や義務などが書かれた書類なので、十分に理解する必要があります。
売買契約は、売主と売主側仲介業者、買主と買主側仲介業者の四者が、契約場所に集まり、いよいよ契約です。
どうしても売主と買主の都合がつかないときには、手付金の支払い方法や手付金の領収書の受け渡し方法などを事前に決めた上で、署名捺印を別々の日に行う場合があります。
通常は、同席した宅地建物取引士が重要事項説明の読み合わせをおこない、契約書を読み上げて、売買契約書を締結します。
契約条件について、合意した内容が契約条項となっていることの最終確認であり、契約条件の話合いをするためのものではありません。
契約当日に新たな契約条件や、内容の変更を申し出ることがないようにしなければなりません。そのためには、早い段階で契約書の内容を確認しておくことが大切です。
契約書をはじめ、書類への署名と押印後、買主から手付金の授受を同時におこないます。
契約後、契約書を売主と買主がそれぞれ一部ずつ持ち帰って完了となります。
引渡しに向けて準備をする
売買契約の締結が終わったら、物件の引渡し準備を始めます。土地など実測売買の場合は、速やかに測量の手配が必要になります。
引渡しのとき建物内などに残置物があるとトラブルになりますので、早めに処分することが必要です。
土地に建物が建っている場合、契約内容によって建物を解体して、更地として売却するとき、売主が解体費用を負担しなければなりません。
建物の解体費用は、その規模や内容により大きく異なります。予想以上の費用が必要になることもあるため、事前に査定を依頼したほうがよいでしょう。
自己居住中の建物を売るときは、残代金の受領と物件の引渡しは同時に行われるため、売主は事前に引越しを済ませておかなければなりません。またガス・水道・電気などについては料金の精算をしておく必要があります。引渡し日の間際になって慌てることがないように、早め早めに準備をしましょう。
また住宅ローンが残っている場合、ローンの解約を借入れをしている金融機関に申し出て、自宅の抵当権の抹消手続きをしなければなりません。
売買契約をした売主の義務は、土地や建物を契約で約束した状態で引き渡すことです。約束した状態の土地や建物を約束の期日までに引き渡すことができないときには、契約違反となり、債務不履行責任を負うことになってしまいますので注意が必要です。
残代金の受領と物件の引渡し
物件の引渡し当日には、残金の支払いや登記申請が必要になることから、金融機関や法務局が開いている平日の日中に行うことになるのが一般的です。あらかじめ日程の調整をしておきましょう。
買主が住宅ローンを利用する場合、借り入れる金融機関に、売主、買主、不動産会社、司法書士などが集まって、売買代金から不動産売買契約の際に受け取った手付の金額を引いた残代金を授受します。
買主は代金の支払いと同時に土地・建物の引渡しを受けて、所有権を自分のものにする必要があるため、決済・引渡しには所有権移転登記手続きを行う司法書士が必ず立ち会い、売主から提出される登記書類を確認します。
買主のための登記手続きを行うことから、この司法書士は買主側が用意するのが一般的です。
売主には、買主の完全な所有権を阻害する一切の負担を除去抹消する義務があり、所有権移転登記書類だけでなく、抵当権等の抹消書類一式を買主に引き渡さなければなりません。登記書類に不備があると、決済ができなくなってしまいますので注意が必要です。
引渡しに必要な書類
次の準備事項のうち、専門家への依頼が必要なものについては、媒介業者が紹介や手配等をしてもらえますので、営業担当者と打合せをしておきましょう。
<土地・建物の登記済証(権利書)または登記識別情報>
代金受領と同時に買主に引き渡します。万一、紛失等してしまっている場合には、いずれも再発行ができませんので、司法書士による本人確認情報、または事前通知制度を利用することになります。
司法書士による本人確認制度は、所有権移転の登記申請を行う前に、司法書士などの専門家によって、売主が本人であることの確認手続きをし、登記官がそれを認めれば登記の手続きが行われます。
事前通知制度は、売主が登記済証等なしで登記申請をおこなう場合、申請内容に間違いがないかどうか、登記官によって本人の住所宛に本人限定受取郵便が送付され、2週間以内に登記官へ所定の書類を返信することで確認手続きがなされます。
ただ実務において、登記申請が却下される可能性があるため、取引の安全を考慮すると、司法書士による本人確認制度を利用するのが一般的です。
<抵当権抹消書類>
残代金の受領と同時に、登記済証(権利証)とともに買主に引き渡します。住宅ローンなどの借入によって、抵当権等が設定されている場合は、事前に抵当権者への返済と抹消書類の受領方法を抵当権者である金融機関等に確認しておく必要があります。
<印鑑証明書と実印>
登記簿上の住所と印鑑証明書の住所が異なる場合、住民票等が必要になります。
<土地の確定測量図や建物の関係書類原本一式>
確定測量図は隣地との境界や、引き渡す面積を確定するために土地の測量を行った図面です。これは売却する不動産の範囲を決めるために、不動産売買契約後に実施するものです。
建築確認申請時の書類、検査済証、土地測量図等、手元にある関係書類一式を整理して
おきましょう。
マンションの場合は、管理規約や使用細則の原本、また区分所有者の変更届、管理費や修繕積立金の引き落としをするための口座振替依頼書など、引渡義務のある書類等を用意しておきましょう。
物件の最終確認
決済を行う前に、売主と買主の立会いによる物件の最終確認を現地にて行います。売買契約書に定めた条件で引渡しが行われるかどうかの最終確認をします。
買主の引渡し前の物件確認には、売主も立ち会うのが原則ですが、やむを得ない場合は売主は立ち会わずに、媒介業者が代わりに立ち会うこともあります。
買主は、契約時の状態または約束した物件の状態になっていることを確認します。敷地の境界を確認したり、売主と買主が約束していた補修工事、または建物の解体工事が未了等があり、約束した引渡し日に引渡しができないときは、買主の承諾を得て引渡日を延期するか、引渡し後に工事を行う覚書を交わして引渡しを行うことになります。
早めに引渡し準備をして、書類の不備や未履行の工事等がないようにしなければなりません。
残金決済および引渡し
買主が住宅ローンを利用する場合が多いので、通常は金融機関に集まって振り込みで残代金を授受することになります。
残代金を全額受領したと同時に、所有権移転、抵当権の抹消等の登記申請を司法書士に委任します。
固定資産税やマンションの管理費等については日割りで清算を行ないます。引渡し前日までは売主の負担、当日からは買主側の負担とするのが一般的です。
登記申請をおこなう司法書士への報酬などの支払い、および仲介手数料の残額を支払いも行います。
残代金の決済をした後に、鍵の引渡しを行います。玄関だけでなく、すべての鍵を引き渡すことになりますので、あらかじめ用意しておく必要があります。
鍵の引渡しが終了した段階で、すべての取引は完了です。
契約不適合による売主の担保責任
売主は、売却した土地・建物に買主が注意しても知ることができなかった欠陥や、種類、品質等に関して契約の内容に適合しないものがあった場合、特約で免責していない限り、契約不適合責任を負うことになります。
引き渡した目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであることを、契約不適合といいます。
例えば、引渡し後に、土地が土壌で汚染されていることが判明したり、建物の土台がシロアリの被害を受けていることがわかったりした場合です。
引き渡した目的物が契約不適合であった場合については、民法上、売主には4種類の義務・責任があります。
<追完義務>
買主は、目的物の修補、代替物の引渡し、または不足分の引渡しによる履行の追完を請求する権利があります。
例えば、屋根の雨漏りが契約不適合責任の対象となる場合には、売主の費用と負担で屋根の修理を行わなければなりません。
<代金減額>
買主から追完を求められても追完を行わないときには、契約不適合の程度に応じて、買主からの請求によって、代金を返還する、または減額するよう求める権利あります。
<損害賠償義務>
引き渡した目的物に契約不適合があり、売主に過失がある場合、そのために買主が損害を受けたときには、売主は損害を賠償する義務を負います。
例えば、売主は屋根が破損していることを知りつつ告知せず、雨漏りが発生したような場合です。
<契約解除>
買主から求められても追完を行わないなどの場合には、売買契約が解除されることもあります。契約解除された場合、売買代金は買主に全額返還することになります。
不動産を売却した後は
引渡し後に忘れてはいけないのが、税金の納付です。売却した場合、売却した金額にそのまま課税されるわけではありません。売却した金額から、取得する時にかけた取得費用と売却する時にかけた譲渡費用を差し引いても譲渡所得(利益)がでれば課税されます。
不動産売却で利益が発生した場合は、所得税や住民税などの税金を納める必要があります。所得税と住民税は、条件によって特別控除や買い換え特例が受けられる場合があるので確認しておきましょう。
また、不動産売却で得た所得は譲渡所得として区分されるので、他の所得と異なる方法で税額を計算して、確定申告を行う必要があります。
確定申告をする場合や、各種特例、控除制度の適用については、税理士等の専門家に相談、確認して手続きを行うようにしましょう。
最後に
不動産売買をするにあたり、宅地建物取引士は、不動産担当者が持っているべき資格ですが、担当者の全員が保有している訳ではないので、必ず確認するようにしましょう。
不動産売却の成否は、優秀なパートナーを見つけることができるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
不動産査定の際、各不動産担当者は自身の会社を選んで欲しいからという理由で、実際の売却金額よりも高額な査定額を提示してくる不動産会社が多くある中、根拠を提示しながら説明してくれる不動産担当者かどうか。
なるべくレスポンスが早かったり、誠実な対応をしてくれたり、悪い報告でもすぐに伝えてくれる不動産担当者であるかどうか。
不動産売却は、人生において数多くあるわけではありません。より良い条件で不動産売却をするためにも、不動産担当者はしっかりと見極めるようにしましょう。
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