不動産を売るときプロはどのように査定しているのか?
不動産には定価がありませんので、住まいを売ろうと思ったときには、不動産会社に価格の査定依頼をしなければなりません。
不動産査定とは、売却の予想価格を算出することであり、必ずしもその金額で売却できることを保証するものでもありません。
これくらいの価格で購入してくれるお客さんを見つけることができるのではないか。という予想の価格なのです。
かなり築年数の古い実家が意外に高く査定されたり・・・
大事に使っていた自宅の評価が驚くほど低くかったり・・・
といったなど想定外の評価をされる場合もあります。では実際に不動産会社は住まいのどこを査定しているのでしょうか?
住まいを売却する際の評価について、どのように行われているのか詳しく解説します。
2つの査定方法
不動産査定の方法としては、主に机上査定と訪問査定の二種類があります。
机上査定とは、物件を実際に見ることなく、住所や間取など物件の情報や近隣の相場、類似物件の成約事例をもとに、およその金額を出す簡易的な査定のことです。
但し、この査定はあくまでもだいたいの目安であって、正確な査定額ではありません。
訪問査定とは、駅からの距離や周辺環境から言える立地条件、現状の間取り、インフラの状況、陽当たり、建物の傷み具合、周囲の道路状況、備わっている住宅設備など細かくチェックします。
簡易査定と比べて、より精度の高い査定を受けることができ、査定結果が出るまでに約一週間程度かかることが多いです。
査定価格の算出方法
不動産会社が実際に価格を算出する方法には、取引事例比較法、原価法、収益還元法の3つがあります。
取引事例比較法は、査定をしようとしている不動産と条件の近い、過去の実際に取引された事例を選んで比較する方法です。
選んだ不動産の平均坪単価を算出し、算出された単価に、売却する不動産の坪数を掛け合わせ、その金額をベースに個別事情を考慮して査定結果を出します。
原価法とは、一戸建ての建物部分の査定に利用されることが多い査定方法です。
今建っている建物を取り壊したと仮定して、新築で立て直した際の費用を計算し、その価格から現時点での家の状態を評価して差し引き、査定額を算出していきます。
収益還元法は、売却しようとしている賃貸用不動産などが、将来どのくらい稼ぎだせるのかを予想して、その収益力に基づき不動産を査定する方法で、投資用不動産の査定に用いられます。
法定耐用年数
『法定耐用年数』
◆木造・・・・・・・・・・22年
◆軽量鉄骨造・・・・・・・19年
◆鉄骨造・・・・・・・・・34年
◆鉄筋コンクリート造・・・47年
木造は期間が短く、鉄筋コンクリート造は期間が長くなり、築年数が耐用年数に近いほど査定価格は低くなります。
公益財団不動産流通近代センターが作成した査定価格マニュアルには、築年数の評価をスコアリング式で表しています。
評価は築10年で0になり、それ以降はマイナス評価になります。
境界が明確になっているか
土地や一戸建を売却する場合、売主には境界明示義務があり、不動産の重要な確認項目の一つです。
境界については、隣地との境界境である民々境と、道路との境界境である官民境の2種類があります。
境界が確定しているかどうかを確認する最も簡単な方法は、確定測量図という名称の図面があるかどうかです。
民々境、または官民境の境界がきちんと明確になっている状態のことを「境界が確定している」といい、確定測量図があれば、境界は確定していることになります。
関連記事:境界の明示は所有者の義務です!
窓から見える眺望や日照
同じ築年数や間取りでも景色や陽当りが良いとより高い評価になります。家が少し高台に建っていて、見晴らしが良い場合には眺望の良さが加味されます。
方角が南向き、近くにマンションやビルなどの高い建物がない、また湿気がこもりにくく、風通しが良い住宅は、快適に暮らせるメリットなどがあり、空気の流れを意識した間取りであることなども査定のポイントです。
周辺環境
不動産会社が独自に周辺環境の調査も行います。最寄駅やバス停、商店街、大型スーパー、公共施設などの位置や距離を調査します。
最寄駅やバス停に近ければ、交通利便性が高いため評価が上がります。また、閑静な住宅街でも、スーパー・コンビニ・教育施設などが近くにあると、生活が至便となり評価は高くなります。
近くに送電線や産業廃棄物処理場、下水処理場等の嫌悪施設と呼ばれるものがある場合には、査定価格を落とす原因となる場合があります。
何が嫌悪施設になるか決まっているものではありませんが、反社会的勢力の事務所や大きな工場、交通量の多い幹線道路など、悪臭や騒音、強力な電磁波等が発生し、不快感を与えるような施設が該当します。
住まい自体に何ら問題がなくても、周辺の環境しだいで評価が低くなる場合があります。
癖のない間取り
どんな人でも住めるような癖のない間取りがポイントです。
戸建て住宅では、部屋の数とそれぞれ部屋の広さ、生活するうえでの動線がスムーズであるかなどが重要なポイントになります。
戸建て住宅の場合、マンションとは異なりオーダーメイドで建てることもあるため、キッチンと洗面所やトイレの移動が楽に行えるかなど、水回りの家事動線や間取りが実際に生活した場合に、住みやすい家であるかが基準になります。
間取りにこだわった家はクセがあると思われ、意外と人気が下がり安価になる場合があります。中古住宅には、なるべくシンプルな間取りのほうが、住まいの売却には向いています。
雨漏りなどはないか
雨漏りや床の傾き、シロアリ被害がある一戸建ての物件は、売却に苦労します。雨漏りなどがある場合は、修復してから売却するようにしたほうが良いでしょう。修復できればスムーズに売ることはできます。
傾きが明らかな物件は、売却できない場合があります。もし家が傾いていたら、不動産会社に告げる必要があります。
また壊れたものを修理するという意味の修繕は、原則必要です。お湯が出ない、排水が詰まる、空調が効かない等の生活する上での致命的な破損・損傷に関しては、修繕が必要になります。
水回りの状態
トイレ、風呂、洗面台に水垢などが付いていると、汚い印象がついてしまい、評価が下がります。
ガスコンロまわりやキッチンの換気フードの汚れ、トイレの便座や便器の汚れ、浴室の鏡のウロコ汚れもマイナスポイントとなってしまいます。
また水回りにある換気扇などの設備も放置すると劣化が早くなってしまい、修繕費の支払う買主に嫌がられるからです。
査定のためのリフォームは必要か?
訪問査定において査定額を上げるために、売却することを決めてからリフォームを行おうとする場合、水回りの設備や、日の当たる部屋をリフォームすることで、査定額が上がるかもしれませんが、上乗せされた金額がリフォーム費用に見合わなければ、結果的に赤字になってしまいます。
例えば、250万円の費用をかけてリフォームした後に査定を受けた場合、250万円以上高く査定を受けれる保証はありません。
また、査定額に影響が出やすいのは配管や躯体といった目に見えない部分に加えて、陽当たりや間取りなど、大規模なリフォーム(リノベーション)を必要とする部分です。壁紙などは購入者が張り替えるケースもあるので、そこまで気にする必要はないかもしれません。
ただし、基本的な掃除はやっておいたほうが良いでしょう。多少散らかっていたとしても査定額に大きく影響しませんが、購入希望者が見学に来たときに敬遠される怖れがありますので、基本的な清掃は行うようにしましょう。
ホームインスペクション(住宅診断)も有効です
特に一戸建て住宅の場合、雨漏りやシロアリ被害は、長年住んでいても気づかないことが多いです。そのまま引き渡してしまうと、瑕疵担保責任に問われてしまいます。
瑕疵担保責任とは、引き渡しから3か月の間に目に見えない欠陥が見つかった場合、売主に補償金・賠償金を請求できる制度です。
瑕疵担保責任に問われないためにも、ホームインスペクション(住宅診断)を利用して、建物診断を受けることが望まれます。
ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅に精通したインスペクター(住宅診断士)が、専門家として住宅の劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行なう専門業務を指します。
まとめ
査定額は「3か月程度で売却できる価格」ですが、それが最大価格であるということを理解しておきましょう。
住まいの清潔感を保つことと、ご自宅の売り出し前にホームインスペクションを行なうことで、建物のコンディションを把握し、売却を成功に導きましょう。
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