顧客が顧客を呼ぶ感動価値の創出 第3章
現状の課題や問題
近年マスコミにおいて大きく取り上げられた、売主(顧客)の「囲い込み」がある。
「囲い込み」とは、売却を望む顧客から直接依頼を受けた会社が他社による引き合い問い合わせ等の情報があるにも関わらず、売却を希望する顧客にそれを告知せず、自社に訪れる顧客を待って対応することを言う。レインズ(指定流通機構)に物件情報として登録はするものの、他仲介業者が介入することで先に述べた仲介手数料は折半となるための自社利益を優先させる行為であり、流通市場の信頼性を著しく損なう行為である。
行政監督庁や宅地建物取引業団体も調査等を始めてはいるが、速やかな改善の目処は
立っていないのが現状である。当社では、公平性に欠ける一部の会社との取引は顧客から誤解を招き、信用を損なうと考え積極的なアプローチは控えている。
次なる問題点は慣習化している不動産仲介会社の外交員制度である。
多くの不動産仲介会社は仲介手数料収入の一定割合を歩合給としている。他業種でもインセンティブと称して歩合給は存在するが、その比率が著しく大きい。その結果社員は自己の報酬を優先するようになり、顧客にとりおそらく人生において、一番高い買物となるだろう宅地建物の購入を性急に判断決定させる傾向に走る。
近年急増する外国籍の顧客に対する対応の充実も課題である。
単に住宅ローンのコンサルタントといった次元だけではなく、安心して住まう、近隣住民とのトラブルを起こさぬよう、生活する上でのルールを分かり易く伝えていかなければならない。
ブランドとは何か~経営者が発するアイデンティが企業ブランドになる
ブランドとはアイデンティティである。
ブランドは、企業から顧客に向けてのメッセージであり、顧客が企業の価値を知る上での重要なファクターである。
塾生の一人である永井寛子は、親が築いた鮮魚店を引き継ぎ、『魚春』という飲食店を経営している。提供する食材や職人の腕にこだわり、大手飲食チェーン店と差別化を図るべく創意工夫をして独自のブランド構築に取り組んでいる。また塾生の小泉賢貴は、障害者支援をする『朝焼け』という会社を経営しており、利用者に提供するサービスの質を意識し、困っている人に役立つにはどのように対処すべきか試行錯誤をして、サービス価値の違いからブランドを構築できないかに取り組んでいる。
西河塾長は、『アーネストワン』という社名の由来やロゴの対しての想い、技術開発をしたシステムや部材、広告宣伝に関わるコピーなど、なぜそのようになったのかを講義をしてくれた。
業種業態、会社規模の違いはあれ、共に会社や仕事を熱く語る言葉に顧客へ向けてのストーリーを感じ、ブランドとは何かを学ぶことが出来た。顧客の認知を得るには、経営者自らが発するアイデンティが必要である。それが企業としてのブランドになり、顧客が判断する価値基準になる。
当社として顧客にメッセージを届け、ブランドを築くことが事業を進める中で重要なのではないか。技術、商材、サービスといった提供するものは各社様々だが、そこには経営学上のブランド戦略が必要不可欠ではないだろうかと気が付いた。顧客は、ブランドの価値を感じた瞬間に安心感と深い満足感を得ることができる。そこに提供する価値としてのビジネスが付帯する。
顧客が顧客を紹介するといったブランドの存在
不動産は、サービス業である。不動産は消費財ではない。不動産は一生の買い物と言われ、ブランドが構築できたとしても、繰り返し購入に来るのは稀である。顧客の信頼を勝ち取れて、ブランドが出来ても、レピーターにはならない特質を持っている。しかし不動産業にもブランドは必要である。
国内においては一部の大手不動産会社しか会社名、商品名といったブランドは確立されていない。顧客によっては大手不動産会社だから安心といった価値を判断材料にしているケースもあるが、接する担当者に親しみを感じ、いろいろと質問がしやすく、わかり易く説明してくれるといった価値で判断されるケースもある。
顧客は担当者が誠実なのかといったことを見極め、一生の買い物だからこそ、人間性を求めているように考える。買い替えのご相談をいただいた顧客に、「こちらの物件はどちらから購入されたのですか」と聞くと、顧客は会社名を挙げるより、営業担当者の名前を挙げるケースもある。最初の出会いから顧客になるまでのプロセスや入居後の良好な関係にこそ、顧客が顧客を紹介するといったブランドの存在があるようにも思える。
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