あきない世傳金と銀(五)転流編~「商いの心情は、買っての幸い売っての幸せ」
髙田郁著、あきない世傳金と銀(五)転流編、ハルキ文庫を読了しました!
みをつくし料理帖シリーズで確固たる地位を築かれた髙田郁さん。大阪天満の呉服商・五鈴屋を舞台に展開される「あきない世傳金と銀」シリーズは、どんどん面白くなってきました。
縁と月日
「良縁を得るには時をかけよ」
主人公・幸に治兵衛は深い意味を示します。「物事の成るか成らぬかは、人の想いや働きだけで決まるものではない。神仏の手が差し伸べられか否か、加えて、起きてしまった難事を解決するためには短気は禁物で、決して諦めずに歳月をかけてゆっくりと時節を待つことだ」
あらためて主人公・幸のココロに染み渡ります。
情をかけなはれ
「商い」いうんは時に非情なもんだす。今回の場合、買い上げた五鈴屋が主、買い上げられた桔梗屋は従。主従のけじめはきっちりつけなあきまへんのや。その上で、情けをかけなはれ」
もとの番頭・治兵衛の話の意味が理解できず戸惑う主人公・幸。
七夕の短冊に示した願いは心をひとつに‥三兄弟に嫁すという数奇な運命に翻弄されずに前へと歩む主人公・幸の心根に感動です。
知恵を形に
髙田郁さんの凄さは取材量!
みをつくし料理帖に紹介される料理は、全てご自身で作られたとインタビューで応えられていました。ゆえにファンとして次作を望むのですが、半年に一作品のペースに成らざるを得ないと。
あきない世傳金と銀では呉服屋さんが舞台なのですが、この呉服には歴史もあり、奥が深い世界、見事なまでに取材を重ねられています。一冊の本を書かれるのに一体どれだけの本を手にし、実際の反物を手にされてのか~頭が下がります。裏打ちされたものがあるからこそ、これだけ読者を引きつけるのでしょう。
単に呉服を売るだけでは駄目と知り試行錯誤、知恵を形に努力する主人公・幸に、みをつくし料理帖シリーズの主人公・澪の姿が重なるのはわたしだけではないことでしょう。
艱難辛苦を乗り越える「笑う門には福来たる」
「艱難辛苦」とは多くの辛く苦しい困難のこと。困難に直面したときにその人の人物の大きさと、成長の可能性が見える。 まずは逃げないことが大事であると言った意味です。
みをつくし料理帖では主人公・幸の手を見た占い師が「雲外蒼天」の手相と占いました。「雲外蒼天」とは「運外に蒼天あり」といい、暗雲の外に出れば蒼穹(あおぞら)は広く、あたたかい。雲は、さまざまな障害や悩みを意味。困難を乗り越え、努力して克服すれば、快い青空が望めるといった意味です。
日々の幸せに感謝し、笑顔でいる、笑う門には福来る~ありがとうの反対語は「あたりまえ」、あたりまえのことなど世の中には何一つ無い!と繋がるのではないでしょうか?
元広島東洋カープの黒田博樹投手が口にする~耐雪梅花麗をご存知ですか‥
耐雪梅花麗は雪に耐えて梅花麗しと読みます。
西郷隆盛の漢詩の一部なのですが「梅の花は寒い冬を耐え忍ぶ事で春に一番麗しく咲く」、わたしの大好きな言葉です。主人公・幸、正しく波乱万丈、これでもかといったストーリー展開に息を呑みました。
これは‥みをつくし料理帖をも超える作品となるのではないか‥。次なる第六作の展開、いやラストのエンディングは‥興味津々です。
髙田郁さんへ
素晴らしい作品をありがとうございます。
あなたの本にどれだけ励まされ勇気つけられることでしょう。
わたしにとって高田郁さんの作品はもはや浅田次郎の領域、
そう泣かせの髙田郁です。
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